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研究の紹介

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月惑星科学(基礎科学)

1)月惑星科学(基礎科学)

火山・火成活動

 

火山・火成活動​​​​

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月や惑星の火山・火成活動は、天体内部の熱進化やマグマ生成過程を記録するとともに、地形、地質、鉱物組成、さらには地下空間資源の形成を支配する重要な地質プロセスです。本研究では、衛星画像、分光データ、地形データを統合的に解析し、月の火山活動史や火成活動の時空間変化を明らかにしてきています。特に、これまで十分に研究されてこなかった月地下も含めた火山活動や火成活動の特徴を明らかにし、月内部進化との関係を解明することを目指しています。
 
火山活動によって形成された溶岩チューブや地下空洞の形成メカニズムを解明し、さらには、将来の月面基地建設に利用可能な地下空間資源としての評価を進めています。AIや画像解析技術を活用し、火山性露頭画像から岩相や層構造の特徴量を自動抽出する研究にも取り組み、地質調査の高度化・自動化を進めています。惑星火山学、火成岩岩石学、リモートセンシング、情報科学を融合し、惑星の形成・進化から宇宙資源利用までを結び付ける新しい研究を推進しています。
月の縦孔,溶岩チューブ
図:月表側嵐の大洋の中、マリウスヒルに見つかった月の縦孔(直径約50m)
クレータ年代学

クレータ年代学

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月惑星にみられる衝突クレータは、太陽系天体の形成・進化を記録する最も重要な地形の一つです。本研究では、衝突クレータの形成過程を数値シミュレーションによって解析するとともに、クレータ個数密度を用いた年代測定手法により、月や惑星表面の形成年代を推定しています。衝突現象の解析には、衝突物理シミュレーションコード iSALE を用いるほか、有限要素法による力学解析によるなどして、月の縦孔やクレータがどのようなメカニズムのもとで形成・維持されるのかについても研究を進めています。
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さらに、SELENE(かぐや)などの探査データを用いて、月の海や高地、火山地域など多様な地質単位の形成年代を系統的に求め、月全体の地質進化史の再構築に取り組んでいます。クレータ年代学は、惑星科学のみならず、資源探査地域の形成履歴や地質年代を評価するための重要な基盤技術でもあります。本研究では、衝突物理学、構造地質学、数値解析、年代学を融合し、惑星進化と資源形成過程の理解を目指しています。
クレーター年代学,クレーターカウンティング
図:マリウスヒルに見つかった孔の近傍の領域のクレータカウンティング結果(カウンティング : 諸田博士)
月惑星表層プロセス

 

月惑星表層プロセス

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惑星表層では、太陽風、宇宙線、微小隕石衝突、熱環境などの影響を受けながら、現在もさまざまな物理・化学変化が進行しています。本研究では、月表層における現在進行中の表層プロセスを対象とし、放射線環境、水・揮発性物質の移動、宇宙風化などの現象を総合的に研究しています。国内外研究者とも共同して、縦孔や地下空洞内の放射線や温度評価を実施するなど、将来の有人探査や月面基地設計に必要な基礎データの取得も進めています。また、月高緯度の地下空洞内の水分子が、空洞内をどのように移動・吸着・脱離するかについて、数値シミュテーションによってい解析研究しています。
 
こうした天体表層プロセスの研究は、月表層環境の理解だけでなく、将来の水資源利用やその場資源利用(ISRU)の実現にも直結する重要な課題です。惑星環境科学、放射線科学、表面科学、資源工学を融合し、現在進行する惑星表層プロセスの理解と宇宙利用への展開を目指しています。​​
ライナーガンマ,スウォール
図:月嵐の大洋にある不思議な渦巻き模様、ライナーガンマ。磁気異常と太陽風との相互作用で形成されている
応用地形・地質・鉱物学と、リモートセンシング
地形解析・三次元地形モデリング
分光リモートセンシングによる鉱物・水探査
地下探査レーダによる地下構造解析

2)応用地形・地質・鉱物学と、リモートセンシング

(観測と計測)

先端的なリモートセンシング技術を用いて、月・惑星の地形、地質、鉱物組成、地下構造を解明し、惑星の形成・進化の理解と宇宙資源探査に資する研究を行う​​

図:SELENE搭載地形カメラの立体視画像ペアを用いて得られたオルソ画像と標高データ(DTM)を用いて作った3D画像

 

地形解析・三次元地形モデリング

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惑星表面の地形は、その天体の形成・進化や地質活動の履歴を記録するとともに、将来の探査や資源利用の基盤情報となります。本研究では、月・惑星探査機によって取得される高解像度画像やレーザ測距データを用いて、高精度な三次元地形モデル(DEM)の構築と地形解析を行っています。クレータや火山、断層、縦孔、溶岩流などの地形を定量的に解析することで、惑星表層の形成過程や年代、地下構造との関係を明らかにします。
 
さらに、AI・画像解析・コンピュータビジョン技術を導入し、地形の自動抽出や特徴量解析、三次元可視化技術の開発を進めています。これらの成果は、探査機の自律航法や安全着陸地点の選定、月面基地建設候補地の評価、さらには地球上の地形解析、防災、資源探査への応用も期待されます。地形学、情報科学、システム工学を融合した新しい地形解析技術の創出を目指しています。​​
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分光リモートセンシングによる鉱物・水探査

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鉱物や水・揮発性物質は、それぞれ固有の分光特性を持っています。本研究では、可視・近赤外・熱赤外域の分光データを用いて、月・惑星表面の鉱物組成や水・水酸基の分布を解析し、惑星の形成・進化過程や資源分布を解明しています。これまでに月の火成活動や風化過程の解明、月表層に存在する微量な水の検出、小惑星表面の鉱物組成解析などに取り組んできました。
 
また、取得した分光データを画像解析、地形データ、地質情報と統合することにより、鉱物分布図や資源ポテンシャルマップの作成を進めています。さらに、将来の月面その場資源利用(ISRU)に向けて、酸素生成の原料となる鉱物や水資源の利用可能性を評価する基礎研究を行っています。鉱物学、地球化学、リモートセンシング、資源工学を融合し、科学的理解と資源利用の両立を目指しています。
分光観測,スペクトルプロファイラ
図:Nature Geoscience誌(2010)表紙
スペクトルプロファイラデータのバンド特徴を抽出して作った2次元データ

地下探査レーダによる地下構造解析

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惑星表面の地下には、地表からは観測できない地質構造や資源情報が保存されています。本研究では、地下探査レーダを用いて、月や火星などの地下構造を非破壊で探査し、地下の地層構造、溶岩流の累重構造、埋没クレータ、地下空洞などを明らかにしています。観測データに対して電磁波伝搬シミュレーションや逆解析、三次元モデリングを組み合わせることにより、地下構造を高精度に推定する解析技術を開発しています。
 
さらに、地下探査結果を地形・地質・鉱物情報と統合し、地下資源や地下空間の利用可能性を総合的に評価する研究を進めています。これらの成果は、月面基地建設候補地の評価や地下空間資源の探査だけでなく、地球における地下資源探査、インフラ診断、防災分野への応用も期待されています。地球物理学、電磁気学、情報科学、資源工学を融合した次世代の地下探査技術の確立を目指しています。​​
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図:「SELENE搭載月レーダサウンダーで地下空洞の存在を調査する」
​(© JAXA/SELENE)
地下空間資源としての月の縦孔、地下空洞
月の鉱物岩石、水揮発性物質の探査
月の土地・物資の資源的価値の評価

3)月・宇宙資源の理学と工学

科学的根拠に基づく資源探査・資源評価から,将来の持続的宇宙資源利用までを対象とする。

 

地下空間資源としての月の縦孔、地下空洞

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月面には、火山活動によって形成された縦孔や地下空洞(溶岩チューブ)が存在することが明らかになってきました。これらは月内部の地質進化を解明する重要な科学対象であるとともに、放射線や隕石、昼夜約300℃に及ぶ極端な温度変化から人類を守る天然のシェルターとして、将来の月面基地建設に適した地下空間資源と考えられています。
 
本研究では、衛星リモートセンシングや画像解析、数値シミュレーション、探査システム設計を組み合わせ、縦孔・地下空洞の形成過程、内部構造、安全性、利用可能性を総合的に評価します。さらに、探査機の誘導・制御や自律航法技術、地下空洞への進入・離脱技術を含めた探査システムの研究を進め、科学探査と宇宙インフラ構築を結び付ける新しい「地下空間資源学」の確立を目指しています。​
大成建設 空洞内図.png
図:「地下空洞で新たな人類の活動が始まる」(© 大成建設)

 

月の鉱物岩石、水揮発性物質の探査

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​持続的な月探査や月面活動を実現するためには、地球からすべての資源を輸送するのではなく、月に存在する鉱物、岩石、水、揮発性物質などを現地で利用する「その場資源利用(ISRU)」が不可欠です。そのためには、資源の種類、量、品質、分布を科学的に把握することが重要になります。
 
本研究では、分光観測、画像解析、地形解析、レーダ探査などのリモートセンシング技術を用いて、月面の鉱物組成や岩石分布、水・揮発性物質の存在状態を明らかにします。また、観測データを地質学・鉱物学・惑星科学の知見と融合し、酸素や金属資源の生産可能性、水資源の利用可能性などを評価する基礎データを構築します。理学的な月の形成・進化研究と、資源工学・宇宙利用技術を橋渡しする研究として発展させています。​
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図:月極域に限らず、月面のさまざまな場所(図内の青い領域)に水氷が発見された。(春山研究室 豊川広晴さんの研究成果。原著論文は、  https://doi.org/10.1016/j.epsl.2024.119065)

 

月の土地・物資の資源的価値の評価

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​資源を持続的に利用するためには、単に資源を発見するだけではなく、その量、品質、採取性、利用価値、経済性、安全性などを総合的に評価することが重要です。本研究では、月面の土地、地下空間、鉱物、岩石、水、揮発性物質などを対象とし、地球における資源評価の考え方も取り入れながら、宇宙資源に適した新たな資源評価学の構築に取り組んでいます。具体的には、リモートセンシングデータや探査データを用いて資源分布を解析するとともに、資源量、採掘・利用技術、輸送コスト、基地建設適性、環境条件などを統合的に評価し、将来の宇宙開発に資する資源マップや評価指標の整備を進めています。また、月の水資源については、その場資源利用(ISRU)の観点から、採取・精製・利用・輸送までを考慮した経済的成立性の評価にも取り組んでいます。さらに、地下空洞については、空洞の規模や形状、構成する溶岩の物性などを考慮し、AIデータセンタや地下居住施設などの宇宙インフラを設置した場合の熱環境や運用適性の解析も進めています。
 
このように、科学的根拠に基づく客観的な資源評価を通じて、月面基地建設や宇宙資源利用に関する意思決定を支援するとともに、持続的な宇宙開発を支える資源評価学の確立を目指しています。​
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図:月の水資源の濃集量の違いによる、有人探査を行う回数に対する地球低軌道での必要物資質量の違い(国際宇宙探査シナリオ2025の図 6.2-27)。有人ミッション4回程度で、質量的にはその場利用に利があることを示している。しかし、「資源」という観点からは、水資源採掘・輸送・保管・プラント建設維持といった点などのトータルコスト評価をしなければならない。)
月・宇宙資源の理学と工学
宇宙探査システム

(探査・月面基地・宇宙建築・AI・自律探査)

4)宇宙探査システム

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UZUME(月・火星縦孔直接探査)

UZUMEは、月や火星に存在する縦孔や地下空洞へ世界で初めて直接進入し、地下空間を科学探査するとともに、将来の地下空間資源利用や月面基地建設へつなげることを目的とした探査計画です。本研究では、探査機システム、観測機器、誘導・航法・制御(GNC)、探査シナリオ、運用計画までを含めたシステム設計を進めています。春山はワーキンググループ主査として、地質学、惑星科学、機械工学、制御工学、情報工学など約50名の研究者・技術者をまとめ、理学と工学が密に連携しての探査システムの構築を推進しています。

このようなプロジェクトマネジメントは、SELENE「かぐや」において観測機器の主責任研究者として培った経験を基盤としており、さらにJAXAに蓄積されてきたプロジェクトマネジメント研究の成果も取り入れながら、新たな宇宙探査マネジメント手法の深化にも意識的に取り組んでいます。これらの知見は、宇宙探査や将来の月面プラントなどの宇宙インフラ構築に適用するのみならず、卒業研究、修士課程研究、博士課程研究における研究マネジメントにも展開しています。学生が研究課題を自ら設定・計画し、多様な専門分野を俯瞰しながら課題を統合的に解決する能力を養うことを重視し、将来、大規模プロジェクトを牽引できる研究者・技術者の育成を目指しています。
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図:UZUME(月・火星縦孔直接探査)のイメージ図

画像光学航法

月や惑星への高精度な着陸や探査を実現するためには、探査機が周囲の地形を自ら認識し、自律的に位置や速度を推定する画像光学航法技術が重要な役割を果たします。本研究では、月探査で取得された実データを活用し、クレータなどの地形特徴を高精度に抽出・認識する画像解析技術の高度化を進めています。さらに、これらの特徴を既知の地形データと照合することにより、探査機の位置・姿勢・速度を高精度に推定する画像光学航法技術へ発展させることを目指しています。現在、画像解析技術をさらに発展させ、岩塊や地形境界など多様な地形特徴の認識や、AI・コンピュータビジョン技術を融合した自律航法技術へ展開することを構想しています。さらに、地形解析、三次元地形モデル、リモートセンシングデータと画像航法を統合し、縦孔内部などGPS等の外部基準が利用できない環境においても高精度な誘導・航法を可能とする技術の実現を目指しています。

これらの技術は、将来の月・火星探査のみならず、自動運転、ドローン、ロボティクス、地球上のインフラ点検や災害対応など幅広い分野への応用が期待されており、他大学や企業とも連携して研究を進めています。画像解析、リモートセンシング、AI、制御工学を融合し、宇宙探査と地上技術の双方に貢献する新しい自律探査技術の創出を目指しています。
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図:クレータの日向・日陰のパターンを利用してクレータを抽出した図

観測機器開発

新しい科学的発見は、新しい観測技術から生まれます。本研究では、月・惑星探査に必要となる観測機器やセンサシステムの企画・設計・開発・運用までを一貫して行い、科学的要求と工学的制約を両立する観測システムの実現を目指しています。これまでSELENE「かぐや」では観測機器の主責任研究者として機器開発・運用・データ解析を主導し、取得したデータから数多くの新しい科学成果を創出してきました。

現在も、将来の月・火星探査に向けて、分光計測、画像観測、地下探査などの新しい観測機器やデータ解析技術の研究を進めています。また、観測機器そのものだけでなく、「どのような科学課題を解決するために、どのような性能を持つ機器を設計すべきか」というシステム全体の最適化も重要な研究対象としています。科学、計測工学、電子工学、情報科学を融合し、探査ミッション全体を俯瞰して設計できる能力を育成するとともに、将来の宇宙資源探査や持続的宇宙開発を支える観測技術の創出を目指しています。
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図:全方向カメラの振動/衝撃試験の様子。こうした全方向カメラは、将来の月火星縦孔・地下空洞探査にも利用されることが検討されている。本試験の後、カメラは宇宙研ロケットS-520-33号機によって打ち上げられ、その耐宇宙環境機能・性能が確認された。(池谷らJAXA-RM-23-006より)
​UZUME(月・火星縦孔直接探査)
画像光学航法
観測機器開発
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